『中国古代の民俗』

 白川静 『中国古代の民俗』 講談社学術文庫 1980




一冊は白川さんの本を読んでおかないと…と思い、古本屋で見つけて買いました。

   …む、難しい!!!(笑)

白川さんといえば漢字学なんですが、もともとは『万葉集』も研究してらっしゃったんですよね…ずっと前にテレビで見た気がする。日本の古代歌謡である万葉と、中国の古代歌謡である『詩経』を比較しつつ論が展開します。引用してある『詩経』の文も難しいし、『万葉集』のことばも難しい。時々解釈を入れてくれますが、時々訳も解釈もなくて意味が取れず辟易しまくりです;;


内容は、本の裏表紙に説明してある通り。中国古代の民俗を明らかにするのが本書の目指すところで、その方法として、

・古代文字の構造から古代人の生活や思惟を考察

・古代歌謡としての詩篇(詩経など)の発想と表現手法から生活習俗を考察

・以上から考察できたものを、日本の民俗的事実と対応させつつ比較


以上三つの手法を通し、中国古代の民俗に迫っています。

ちなみに、本書中では、白川さんの前著である『中国古代の文化』に触れて、「これについては『中国古代の文化』で言及したので繰り返さない」と言って説明をスルーすることが幾度となくありますので(涙)、『文化』を読んでから『民俗』を読むのがいいのかもしれません…。ちなみに自分は『文化』は読んでません…。



白川さんの漢字解釈でいちばん印象的なのは、やはり「口」の解釈かと(第三章「言霊の思想」)。「口」を口耳のクチとするのが『説文解字』以来の解釈なのですが、白川さんは多くの甲骨文・金文を渉猟した結果、「口」を「サイ」と読み、祝詞を入れる器である、と新しい解釈を提供しています。


この理解に基づいて、「口(サイ)」が含まれた文字(告・言・吉…)や、「口(サイ)」の中の書物を開けた象形の「曰(エツ)」を含んだ文字(書・旨…)について解釈を加えています。この部分は、謎解きを見ているようで、難しいながらも面白い箇所でした。

たとえば「告」は、祝詞の入った「口(サイ)」の上に神木の枝を表す形象を乗せてサイが樹にかかっている形を表し、神に祝詞の内容を「告」げるさまを表すのだ、とか。



他にも、「詩の六義」(風・雅・頌・比・賦・興)のうち表現技法を言う比・賦・興のうちの興についての解釈も新鮮だったでしょうか。一般に、比=直喩、賦=直叙、興=暗喩 と理解されていますが、これについては諸説紛々らしく、今も昔も議論が絶えないとか。


白川さんの解釈では、「興」の字は「同(=同瑁を指す。酒器のこと)」を両手で捧げ持つ形で、聖所を清め地霊を招くために酒を地に注ぐカン【示+果】鬯(かんちょう)の礼の際、同で酒を注ぐ形。すなわち、「興」とは地霊を呼び起こすことだ、とのこと。詩の六義の一である「興」も、地霊を呼び起こし、その呪的な力を感受するための手法のことで、その地の地形や植生を詠み誉めることにより、その地の地霊の力を得ることができると考えられていたのではないか、とのこと。だと思います…すごく難しくてうまくまとまらぬ…(苦笑)。



他にも、『詩』などの古代歌謡に頻出するモチーフについての考察などは興味深いものでした。…読み通すだけで精一杯だったのでこれ以上まとめるのはしんどいのですが(…)、漢字や中国古代の風習について興味のある方は一読してみてもいいのではないかと思います。すみませんこんなまとめ方で…;;

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